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第3話 初めての取引

Author: 黒蓬
last update Last Updated: 2025-03-01 14:56:17

金がない。というか金があってもたぶん払えない。

死ぬ前に持っていた向こうの通貨は宝石に変わっていた。

それに宿代の支払いは恐らく商取引に該当するだろう。

(・・・どうすんだこれ?宿屋もだが食事や道具の補充などあらゆる支払いができないってことだよな?・・・物々交換?宿代や食事代の支払いを?食事はともかく宿泊は物じゃないよな。家自体を交換して貰うことはできるかもしれないが、今の持ち物じゃ流石に足りないだろう。)

考えれば考えるほど今後に不安が募っていくが、現状通貨を得る方法がない以上できることを試してみるしかないか。

そう考えて食堂兼宿屋となっている建物に入る。

「いらっしゃい。外のお客さんとは珍しいな」

中に入ると主人と思われる男が声を掛けてくる。

「あ、あぁ。食事と宿を頼みたいんですが」

「1泊20リム、食事付きなら30リムだ」

「あ~その、支払いなんだがこれでお願いできますか?」

そう言いつつ、小粒の宝石を出してみる。

「いや、そんな物出されてもな」

「そ、そうですか。俺は商人なんですが、さっき門番の人にこの村では薬が不足気味だと聞きました。そこで、この薬では宿代の代わりにはならないでしょうか?」

そういって今度は何種類かの薬を出してみる。

「いや、薬が不足気味なのは確かなんだが・・・やはり現金で払ってもらわないと困るな」

先ほどの宝石よりかなり興味は引けたようだがやはり結果はダメだった。

物での支払いを拒否しているのか、スキルの影響で拒否されているのか判断が難しいが、間があったことから考えると後者の可能性の方が高そうな気がする。

仕方がないので、別の方法を試してみることにする。

「分かりました。。変なことを聞いてすみません。これは詫びとして取っておいてください」

そう言って主人の目線から欲していたと思われる薬を渡す。

「え?いいのか?いやでも流石に悪いような・・・」

「いえいえ。当てができたらまた来ます」

そう言ってそのまま宿屋を後にした。

もちろん意味もなくタダで薬を渡したわけではない。

主人に先に利益を齎すことで好感度を上げておき、相手の好意で1泊泊めて貰えないかと考えたのだ。最悪食堂の隅を借りれるだけでも外で野宿よりはマシだろう。

何だか商売の裏道や抜け道を探しているようで多少の罪悪感があるが身の安全には代えられない。

まぁ、これについてはすぐ戻るわけにもいかないので一旦保留にして道具屋に向かうことにした。

「いらっしゃい」

店に入ると店主に声を掛けられる。

商品は農具や大工道具が多いようだ。ぱっと見では目当ての品は見つからなかった。

「道具袋とランタンあと何か武器になるようなものとテントはないでしょうか?」

道具袋は1つでは容量不足になると思われるためだ。武器などもそうだが、今の商品は主に薬なのだ。これが農作物などになった場合、大した量は持てなくなる。これも今後の課題だな。

「うちは村で扱うようなものが主なんだけどね。残念ながらテントは無いよ。あとは・・・ちょっと待ってな」

そう言って店主は裏に回った。少しすると商品を持って戻ってくる。

「悪いがどれもこの1点しかないよ。買いに来る客なんて滅多にいないからね」

近づいて商品を見せてもらう。武器として持ってきたのは短剣だった。

いずれも品質に問題はなさそうだ。

「ランタンのオイルは?」

「1日分ならここで入れてやるよ。予備が欲しければ雑貨屋に行ってくれ」

「なるほど。代金はいくらになりますか?」

「袋が60リム、ランタンが80リム、短剣は100リムだ」

ランタンの方は少し高い気がするが、この辺だとガラスは希少なのかもしれない。必要なものだし仕方ないか。

「なるほど。これで取引できますか?」

そういって宿屋で見せたのと同様に宝石を出してみる。

「う~ん・・・まぁ、いいかね」

店主は渋い顔でそう返してきた。

良かった。物々交換を持ちかけること自体に違和感は持たれてなさそうだ。

だが、それなら渋い顔をしているのは?・・・そうか。宝石はこの村では使い道がない。宝石自体が好きな人でもなければ換金の手間が掛かるだけだろう。

つまり需要が低いから嫌がられているのか。

だが、その割には価値は割と適正に評価されている気がする。

今出した宝石は標準的な価値では320リムほどのものだった。

「いや、すみません。こちらの薬のほうが良いでしょうか?」

試しに先ほどと同様にいくつかの薬を出してみる。

「へぇ、あんた商人だったのかい。そうだね・・・これとこれでなら交換で良いよ」

そう言って店主が手にしたのは価値にして120リム程度のものだった。

待て待て、確かに需要はあるんだろうが、倍の価値で取引が成立するのは都合が良すぎないか?

それほどに需要による交換レートの比重が大きいのだろうか。まさか初対面で好感度が高いわけもないし・・・。

だが良い方法に気づけた。こちらからは複数提示して相手の望むものを交換対象にして貰えばかなり有利に交換が成立できる。

「どうかしたかい?」

思わず考え込んでいると店主から怪訝な顔をされてしまった。

「いえ、なんでも。あとできれば何か仕入れたいのですが、この村に特産品の様なものはないでしょうか?」

「特産品かい?いやぁ、そんな特別なものはないねぇ。しいて言えば雑貨屋の店主が趣味でやってる木彫り細工くらいかね」

「木彫り細工?」

「あぁ。結構良い出来でロンデールの町から偶に買い付けに来る商人がいるくらいだ」

「それはすごいですね。ちなみにロンデールって町はどっちの方角にあるんですか?」

「ロンデールかい?街道を北へ向かって分かれ道を東に行った先だよ」

町の情報まで手に入ったのはラッキーだった。特産品もあるみたいだし、良さそうなものがあれば買い付けてロンデールに行くのもいいかもしれない。

「分かりました。ありがとう。」

買ったものを道具袋に纏めて店を出る。

良い情報も貰ったし次は雑貨屋に行ってみるか。

「いらっしゃい。初めてのお客さんだね」

「えぇ、ランタンのオイルの予備と木彫り細工というのを見せて欲しいんですが」

「あら、うちに木彫り細工を置いているなんてよく知ってたね」

「さっき宿屋に行ってそこの主人に聞きました」

「あぁ、ランブルさんにね。オイル瓶なら2日用と4日用があるよ。木彫り細工なら向こうの棚に置いてるから自由に見てくれ」

「ありがとう」

言われた通り棚の方へ向かうと大小様々な木彫り細工が置いてあった。

ベッドやいすのような家具のミニチュアやリスやクマのような動物を模したものなど。

俺には審美眼などないがそれでもその細工は精巧なものに見えた。

「あなたの細工物をロンデールの商人が時々仕入れに来ると聞いたんですが、その時はどんなものが良く買われているんですか?」

「ん?もしかしてあんたも商人かい?あぁまぁ、確かに好事家には見えないか。そうだね、その人はよく家具のミニチュアを買っていくよ。贔屓にしている貴族様が気に入ったらしくてね」

なるほど。売り先が決まっているわけか。俺にはそんな伝手はないし参考にはならないな。だが、これだけのものなら町で売れる可能性は十分あると思う。

そう考えなるべく荷物にならなそうな小動物の細工物をいくつかと日持ちしそうな食糧を選んで店主に聞いた。

「2日分のオイルとこの細工物、あと食糧で合わせていくらになりますか?」

「え~っと、全部で400リムだね。端数はおまけしておくよ」

思ったよりもだいぶ安い。うまく町で売り先さえ見つけられば、かなりの利益が見込めそうだ。

道具屋の時と同様に複数の品を見せて希望するものを選んでもらい280リム分くらいの薬や日用品で取引を済ませることができた。

と、店を出た辺りで変化に気づく。

スキルのレベルが上がったらしい。早速確認してみる。

--------------------------------

スキル:わらしべ超者Lv2

自分の持ち物と相手の持ち物を交換してもらうことができる。

自分の持ち物と各種サービスを交換してもらうことができる。 

交換レートはスキルレベルと相手の需要と好感度により変動する。

スキル効果により金銭での取引、交換はできない。

--------------------------------

各種サービス?またずいぶん大雑把な説明だな。。

普通に考えると接客業だろうか?

飲食や医療のような・・・待てよ?もしかして宿泊も含まれるか?

・・・うん。そんな気がする。

はっきり説明がないのがもどかしいがとりあえず試して損はない。

そう結論付けて再度宿屋に戻ることにした。

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    朝になると俺達は早めに宿を出て王城まで向かった。 少しでもミアが会うための時間を作りやすくするためだ。王城の入り口に着くと兵士さんにゴドウェンへの繋ぎを頼んだ。 しばらくすると奥からゴドウェンがやってきた。「なんだ?今日は面会の約束は聞いていないが」 「それなんですが、実はこのハイドキャットをエルミア様に献上しようと思いまして。昨日話している時に大変気に入られた様でしたので」俺の言葉を聞くとゴドウェンさんはロシェの方を見た。今日は最初からロシェに姿を見せて貰っていた。「ふむ。そいつをか。まぁ確かに大人しそうだが、お前は良いのか?」 「もちろんです。エルミア様に気に入って頂ければなによりですので。それで急な話で申し訳ないのですが、本日エルミア様にお時間を取って頂けないかと」 「今日か?それはまた難しいことを言うな」 「申し訳ございません。私達にも予定がありまして。無理にとは言いませんのでエルミア様に聞くだけでも聞いていただけないでしょうか?」無理がある話なのは理解している。だが何とか通さないといけないのだ。 俺はなるべく不自然にならない様にお伺いを立てた。「まぁ、聞くだけなら聞いてみよう。そこの部屋でしばらく待っていてくれ」そう言ってゴドウェンさんは王宮の方へ向かっていった。 俺達は言われた通り部屋に入って返事を待った。(とりあえず、第一段階はクリアか。あとはミアがこちらの意図に気づいてあってくれればいいが)しばらくしてゴドウェンさんが戻ってきた。なんだか少し腑に落ちないという様子だったが、「姫様がお会いになるそうだ。今からで構わないという話だから案内する」と返事が返ってきた。 良かった。これで何とかなりそうだ。 その後、昨日と同じように王宮のミアの部屋まで案内された。「エルミア様、彼らを連れてきました」 「ありがとう。あなたは下がっていて」 「承知しました」というとゴドウェンさんは昨日と同じように部屋の前で待機した

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第40話 国王暗殺計画!?

    慎重に扉を開けるとそこには地下への梯子が掛かっていた。梯子の下の方も真っ暗なので、降りた先にまだ道があるのだろう。 梯子を下りて、少し先に進むと先の方に小さな明かりが見えた。『気を付けて何人かいるわ』ロシェの言葉により注意して進む。足音はしないが何かを蹴飛ばしてしまったら、そちらの音まで消すことはできないからだ。 そうして近づくと段々と男の怒鳴り声が聞こえてきた。「何やっているんだ。慎重に行動しろと言ったはずだろう!襲い掛かった挙句、捕まえることもできずに逃げ帰ってきたとは。お前は計画を台無しにする気か!」 「い、いやだから慎重に行動したんですよ。商人の男一人だけになったところで角から不意打ちするところまでは上手くいったんです。なのに、男が何かしたようにも見えなかったのに突然手に痛みが走ってナイフを落とされたんです」逃げてきた男は必死に弁明していた。「そんなわけがないだろう。今まで見た限り奴はただの商人だ。そんなことができるようには・・・いや、待て。そうかハイドキャットか」 「ハイドキャット?」 「奴らには従魔登録したハイドキャットが居るらしい。まったく姿を見せないから偽情報か別行動でもしているのかと思ったが、ずっと姿を消したまま同行していたのか」上司らしき男の言葉に周りの男達も含め動揺の声を上げる。「な、何でそれを教えてくれなかったんですか?それさえ知っていれば俺だって安易に襲い掛かったりしなかったですよ!」 「黙れ!ならお前はハイドキャットの生態を詳細に知っているのか!長時間隠密行動ができるのならいつ居て、いつ居ないかの判断などできんだろう。それに言い訳したところでお前の失敗した事実は覆らん」 「そ、そんな・・・」男はそれ以上何も言えず沈黙した。「まぁ、済んだことは仕方ない。あくまで奴らを人質に取るのは囮用の計画だ。主目的に支障はない。二日後、内通者の手引きで王城内部に侵入する。そのまま深夜まで待機し、モルドナム国王を暗殺して内通者と共に脱出する。その日、兵の食事には内通者が睡眠薬を混ぜる予定になっている。起きている者もいるだろうが

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第39話 不穏な手掛かり

    「えっ?それじゃ、カサネさんはロシェの言葉分かるようになったの!?」 「はい。アキツグさんのスキルのおかげで」以前にミアがロシェと話したいと言っていたので、知識の交換の部分については話すことにした。「え~いいなぁ。知識、知識かぁ。流石に国の内部に関わることは渡すわけにはいかないし。私個人で出せるもの・・・う~ん・・・」彼女は必死に考え込んでいるが、なかなか良い案が出ないらしい。王女といえば専門的な知識は王族に関わるものが多くなるのだろう。「まぁ、そこまで無理して今考えなくても・・・」 「ダメ、せっかくのチャンスだもん。私もロシェと話したい!」今すぐじゃなくてもと思い提案した俺の意見も言い終わる前に却下された。 それほど彼女にとっては大事なことらしい。「そうだ!私が今まで書き留めたこの王都と王国周辺の情報と交換ならどうかしら。大陸地図もあるわよ。記載があるのは調査済みのところまでだけど」そう言いながら彼女は部屋の隅にあった棚の引き出しから紙束と地図を取り出して持ってきた。「情報って大丈夫なのか?」 「あぁ、情報って言っても機密的なものではなくて。私個人が趣味で調べたものよ。王都のお勧めポイントとか周辺の町や村に行ったときに知ったこととかね」そう言って彼女が見せてくれたのは確かに一般の人でも知り得そうなものだった。 昨日カサネが絶賛した洋菓子店のことも記載してある。 そして大陸地図、これもかなり遠方の情報まで記載されていた。 今まで行き当たりばったりで行動していた俺からすれば是非とも欲しいものだった。「「相手が王都ハイロエント及び周辺地域の情報の交換に同意しました。ハイドキャットの言語と交換可能です」」カサネさんの時と同様にそんな声が聞こえてきた。「交換できるみたいだ。俺としても有難いし交渉成立だな」 「本当?やった!ロシェ、私もお話しできるようになったよ!」話を聞いていたロシェはミアの方に近寄って顔を摺り寄せた。『良かったわね。私もミアと話せるよう

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第38話 エルミアとの再会

    王宮に入りとある一室に通されるとそこにはエルミアが待っていた。「アキツグ!ロシェ!来てくれて嬉しいわ」こちらに気づいたエルミアは駆け寄ってくるとロシェに抱き着いた。『ちょっと、急に抱き着かれたらびっくりするでしょう。まったくもう』ロシェはやれやれといった感じだが、嬉しそうにされるがままになっている。 ゴドウェンさんは気を利かせたのか部屋の外で待機してくれるようだった。「あら?そちらの方は?」そこで漸くカサネさんの存在に気づいたようでミアが尋ねてきた。「初めまして。冒険者のカサネと申します。お会いできて光栄です」そう言うとカサネさんは丁寧にお辞儀した。「初めまして。私はエルミアよ。アキツグさん達の仲間なのよね?今はプライベートだしそんなに畏まった挨拶は不要よ。気楽にして頂戴」 「え、えぇと・・・はい。分かりました」カサネさんはしばらく視線を彷徨わせていたが、俺達の様子を見て観念したのかそう返した。「なんにしても、ミアが無事に戻れていたみたいで安心したよ。南でも戦闘があったみたいだから心配していたんだ」 「そうなの。あの後カルヘルドを出た後も襲撃者達に襲われてね。流石に真正面からぶつかっては勝てないと悟ったのか途中で引いたみたいだったけれど」そう言いつつもまだ何か気にかかることがあるのかミアの表情は晴れない様子だった。「何か気になることがあるのか?」 「う~ん。なんだか王宮に戻ってからも偶に誰かの視線を感じる気がするのよね。王城内に怪しい人物が居れば分かるはずなんだけど」何だか不穏な話になってきた。もしかしてまだ例の襲撃者の連中が諦めずに何かを企んでいるのだろうか?「そういえば、例の襲撃者達については何か情報掴めたのか?」 「あぁ、あの連中ね。こちらでも何名か捕まえたんだけど、下っ端には詳しいことは何も知らされていないみたいでね。結局何も分からなかったわ」 「そうなのか。だとするとまだミアが狙われている可能性もあるのかもしれないな」 「そうね。こ

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第37話 非公式の面会許可

    扉を閉めたゴドウェン隊長はふぅ、と一息つくと俺達に座るように促したあと自身も椅子に座った。「突然悪かったな。あんなところであの時の話をするわけにもいかないので場所を変えさせてもらった。随分早いが姫様に会いに来たのか?」 「いや、あの後カルヘルドの南で戦闘があったって聞いて、少し心配になりまして。無事なのかどうかだけでも確認できればと思ってきたんです。あとは王都の観光も兼ねてました」 「なるほどな。姫様はもちろん無事だ。だが、そんな話姫様が聞いたら怒りだすぞ。姫様はお前達のことを随分気に入ったみたいでな。もし訪ねてきたら必ず連絡するようにと指示されていた」 「そ、そうなんですか。いえ、もちろん会いたくなかったわけではなく俺なんかが面会を求めても許可されるはずがないと思ったわけでして」 「まぁ、確かに公式の場での面会は難しいだろうな。だが、非公式であれば方法はある。今確認をとっているから少し待ってくれ」と、そこでちょうど扉がノックされ、一人の兵士が入ってくるとメモの様なものをゴドウェンに渡す。「ふむ。明日の昼過ぎであれば時間を作れるそうだ。悪いが明日もう一度こちらまで来て貰えるか?入り口の兵士に俺の名を伝えて貰えば迎えに行く」 「分かりました。色々とお手数お掛けしてしまいすみません」 「なに、これも仕事の内だ。気にしないでくれ」そのあとまた兵士に呼ばれたゴドウェン隊長と別れて階段を下りていく。「なんか、意外なほどあっさり面会の段取りができてしまったな」 「あの方が近衛隊長だからでしょうね。普通ならこんなに簡単に話は通らないと思いますよ」 「そうだよな。城の入り口で会えたのは幸運だった」俺が頷いていると彼女がふと気づいたように聞いてきた。「そういえば、私は前回の件には関わっていないんですけど、明日同行しても良いんでしょうか?」 「あの場でゴドウェン隊長に特に何も言われなかったし大丈夫じゃないか?もし明日何か言われた時は悪いけど街の方でも見て回っててくれ」 「そうですね。分かりました」その後は広場の方まで戻り、珍しそうなお店

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第36話 王城へ

    カサネさんと合流してから近場の飲食店に入り、お互いの情報を交換する。「アキツグさんが良い宿を抑えてくれて助かりました。こっちは素材が高く売れたのは良かったんですけど、そのせいか妙に高そうな宿を紹介されてしまって」 「これだけの街だし裏で繋がりとか小競り合いとか色々あるんだろうな」 「そうですね。ライバル店も多そうですし。それにしてもえっと、ミアさん?は戻れていたようで良かったですね。会いに行かれるんですか?」旅の途中でカサネさんにはエルミアとの出会いも話していた。 当然ながら話した時は、信じられないといった顔で驚かれたが。 確かにミアからは遊びに来てと言われていたが、一般人が気軽に会えるような相手ではないだろう。「いや、流石にな。行ったところで門前払いされるだけだと思うし。無事だったのが分かれば十分だ」 『人間社会っていうのは面倒ね。友達に会いに行くことすら憚れるなんて』 「そう言われると辛いが、こればっかりはなぁ。まぁ、今なら隠れて会いに行けるかもだけど・・・いや、姿を隠しても王宮には感知する魔法くらい掛かってそうだな」 「怖いこと考えますね。もしそれで捕まったらどんな刑に処されるか。。」 「想像したくもないな。やめておこう。まぁ、でもせっかく王都まで来たんだ。近くまで見に行くくらいは良いだろう」 「ギルド証などで身分を証明できれば王城の入り口付近までは近づくことが許可されているみたいですよ」 「それじゃ、宿で部屋を取ったら行ってみるか」王城は長い石階段を上った先にあった。階段には他にも城を一目見に来たと思われる人達の往来で賑わっている。 俺達も同じように城の入り口まで来ると、真新しそうなしっかりした城門の奥には広場の様なものが見え兵士たちの訓練風景を見ることができた。王宮はさらに奥の方にあるようである。「これは、城の中だけでもかなり広そうだな」 「ハイロエントはこちらの大陸でもかなりの勢力を持つ王国みたいですから。それだけ防衛にも力を入れているのでしょう」そんなことを話していると、後ろから聞いたことのある声が掛けられた。

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第35話 王都ハイロエント

    スキルの検証も終えて、その後はお互いのこれまでの話などをしながら旅を続けていた。「アキツグさんはまだこの世界に来て1か月程度なんですか。それでもうこんな風に馬車で旅をしているなんてすごいです。私なんて最初の二か月くらいは村でこの世界のことを知ったり、生活に慣れるのに精一杯でしたよ」 「元々旅や野宿には慣れていたからな。俺の場合は生活環境を整えるためにも取引するしかなかったし」 「村の人に助けて貰えた私は運が良かったです。スキルのことを学ぶ時間もありましたし」 「そういえば、カサネさんのスキルってどんなのなんだ?魔法とは別なのか?もちろん話せないなら聞かないけど」 「アキツグさんのも教えて貰いましたし、話しますけど他の人には内緒ですよ?私のスキルは魔法の才能強化です。魔法の成長速度とか消費魔力の軽減とか魔法に関する能力を強化してくれます。複数の魔法を扱えるのもこのスキルのおかげですね」カサネさんは火、水、風、地の四属性の魔法を扱えるらしい。普通の魔法使いは相性の良い一、二属性程度が普通だとか。 カサネさんが二年くらいでBランクまで上り詰めたのも納得の理由だった。もちろん才能に驕らずに技術を磨き続けた彼女の努力があってことだが。「新しい魔法を覚えることもあるので、もしかしたら交換した魔法をまた覚えられる可能性はあるのかもしれませんが、一度失った魔法を覚えられるのか確証が持てなくて。。すみません」 「いやいや。俺もスキルのこと分かってない部分あるし、慎重になるのは当然だよ」カサネさんは申し訳なさそうに謝っていたが、この世界に来て魔法が頼みの綱だった彼女にとってその魔法を手放すのを躊躇うのは当然の反応だろう。 そんな話をしながら数日後には、王都ハイロエントに到着した。 ハイロエントは遠目から見てもかなり大きな都市だった。周囲を城壁がぐるりと取り囲み、街の奥の一段高くなった所に城が築かれている。城の中央には大きめの庭と王宮が作られているらしい。 検問を通り城下街に入ると、今までよりさらに賑やかな街並みが目に入ってきた。「これはすごい人通りですね。流石王都です。エストリネア大陸の方でもこ

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